【東大ドクター】生産性を向上させるたった1つのポイント

今日は、生産性を向上させるためのたった一つのポイントという話をします。

いろんな場面で、必要となってくると思います。
ビジネスでも医療の現場でも勉強でも生産性というのは非常に重要です。
私自身の経験で言うと、東大病院時代にカテーテル手術の件数をどんどん増やしていったのですが、これも一つの生産性の向上です。


そのときにいろんな工夫をしました。
生産性を向上させるための非常に重要なポイント、それは何かということをお話をしていきたいと思います。

それはボトルネックと呼ばれるものです。

あるいは律速段階という言葉もあります。
これを順に説明をしていきたいと思います。
例えば工場などで、製品を作る工程というものがあります。
Aという状態に何かを付け足してBという状態になって、さらに何かを付け足してCになるというような形で工程があるわけです。

この全ての工程が同じペースで進んでいけば、よどみなく進んでいくわけですが、どこか1ヶ所で遅いところがあると、それによってペースが落ちてしまい、そこのスピードで全体のスピードが決まってしまうわけです。

そういう箇所のことをボトルネックといいます。
ボトルネックというのは、瓶の首のところというわけですが、ボトルだとイメージがつかみにくい人もいると思います。
そこで砂時計を考えていただくとわかると思います。

砂時計にも、このようなくびれがあります。
これもボトルネックと同じですが、細くなった部分によって砂時計の砂が落ちるスピードというのが決まってきます。

ここが細ければ細いほど砂が落ちるのに時間がかかりますし、ここが太ければサーっと一気に砂が落ちていきます。
ここが砂の落ちるスピードを決めてるわけです。
このようなところをボトルネックというふうにいいます。

先ほど言った律速段階というのは何かというと、こういった化学反応があります。
化学反応というのは、高校の科学で勉強された方もいらっしゃると思うのですが、少しずつ分子がついて変わっていくわけです。

間でその反応を促進するための酵素というのが働いてるわけです。
段々と変わっていくわけです。
これのスピードがそれぞれの過程において違ってくるわけです。
やはり一番遅い箇所というのが存在します。

それが先ほどの律速段階、文字通りです。
その速さを一層リリースする段階。
その速さを決める、規定する段階ということです。
ですのでやはりボトルネックとほぼ同じ意味合いとして、私は使ってるのですが、その一番遅い箇所が全体のスピードを決めているということになるわけです。

私が東大病院時代、カテーテル手術の件数を増やすために、いろんな工夫をしたのですが、そのうちの一つ、こういうことをやりました。
何かというと会議の回数を増やしたのです。
会議のことをまたカンファレンスと呼ぶのですが、治療方針を決めるための会議というのを、当初週1回だけ行っていたのです。
水曜日の夜に会議をやって、この患者さんはカテーテルで手術をするとか、薬で様子を見るとか、あるいはバイパス手術にするとかそういうのを決めていました。

そうするとどういうことが起きるかというと、例えば木曜日に検査をした患者さんが、まず普通の、冠動脈造影と言って検査だけをします。
そこで結果狭いところが見つかったとします。
そうするとこの患者さんは、1週間たって、水曜日まで治療方針が決まらないという状況があったわけです。

そうするとせっかく検査室が空いていて金曜日に治療ができるのに、方針が決まらないために1週間待たなければいけないなどということが起きていたわけです。
そこで会議の回数を増やしました。

当初は、週2回に増やしました。
週2回にすると、例えば月木とかにすると、もっと方針が決まるまで早くなるわけです。
ですから、その患者さんが待つ日数というのは大幅に減ります。

さらに会議の回数を増やしたのです。
今度は平日、月から水木金、毎日やるようにしました。
そうするとその日、例えば火曜日に検査した患者さん、その日の夕方に会議をして「では明日治療をしましょう」というように、非常にスピードが速くなりました。

以前は、1週間方針を決めるだけのために、患者さんが1週間待たなければいけなかったところを1日でできるようになったということで、大幅にスピードアップすることができたのです。
こういったのも一つですが、いくつか積み重なって、段々その律速段階、ボトルネックを減らしていったことによってカテーテルの手術件数を増やしていくことができました。

これは生産性を向上させるという理論です。
何にでも応用ができます。
簡単な例を考えてみましょう。
例えばパンを作るとします。
私もパン作りを、自分でやったことはないですが、まずパンをこねます。

オーブンに入れて焼くと、パンが出来上がるということになります。
オーブンが小さかったとします。
オーブンが小さくて6個しかパンが焼けないとします。
それによってスピードが決まってしまいます。
あなたがパンをこねるのは、余裕でもっとたくさん作れるんだけども、オーブンが小さいために6個しかパンが焼けないという状態だとします。

その時にオーブンをもっと大きなものにすれば、10個いっぺんに焼ける、20個いっぺんに焼けるオーブンに変えれば一気に生産性が上がるわけです。
一気に10個焼けるようになりました。
そうすると今度はあなた1人で準備をしてもパンをこねても、オーブンのスピードに追いつかなくなるというときが来ます。

その場合どうするかというと、他の人に手伝ってもらって一緒にパンをこねてもらうわけです。
そうするとここのボトルネックがまた解消できて、さらに生産性が上がるというふうなことが起きるわけです。
このように、どこがボトルネックなのかということです。

全体の工程の中でどこがそのスピードを決めてるのかということを見極めて、それを改善するということを繰り返していけば、簡単に生産性は向上させることができるわけです。

意外とこれをご存知ない方がいるかもしれませんが、理屈は決して難しいことではないので、何回か見ていただいて、理解していただいたらいいかなというふうに思います。